日本におけるMOOCsはどうなるのか?

日本におけるMOOCsはどうなるのか?

(以下敬称略)

日時:2013年10月30日 13:00-14:30
場所:第6会場
主催:国立情報学研究所
パネリスト:
 山田恒夫(放送大学)
 三瓶徹(日本電子出版協会)
 逸村裕(筑波大学)
 堀真寿美(帝塚山大学 TIES教材開発室)
 井上仁(九州大学)
司会・モデレーター:
 山地一禎(国立情報学研究所)

概要: フォーラム詳細

20131030 Moocs

フォーラムの構成

  • 本セッションの位置づけについて説明
  • パネルディスカッション

記録

本セッションについて

  • 堅苦しいセッションではなく、ざっくばらんに行いたい
  • 図書館とMOOCsはどう関わるのか
  • 日本のMOOCsをどう考えるのかという話が最近出てきた
  • 今日は図書館に関わる所を議論していきたい

大学図書館とMOOCsについて(逸村)

大学図書館は学習教育に何をする?

  • 大学図書館が従来行ってきた教育・研究支援について改めて現代的に問われている
  • 従来の大学図書館の教育学修支援
    • 閲覧室提供
    • 資料提供
    • レファレンスサービス
    • 図書館利用者教育/情報リテラシー教育
    • パスファインダー
    • 指定図書
    • ラーニングコモンズ
    • では授業についての直接支援では何をしてきたか?

多様化した大学と学生

  • ユニバーサルな状況
  • 学力低下に関する問題
  • そこにMOOCs!

MOOCs:Massive Open Online Course

  • 場合によっては1科目10万人を超え、世界全体で数百万人
  • コース使用料取る
  • 履修管理する
  • 単位修得者/履修登録者
  • 東京大学もコースをはじめる
  • グローバル化(中国から4万人が履修)
  • OCW(Open Couse Ware)との違い
    • OCWは単位を出さない
    • ショーケースとして、授業の内容の一部を見せている

学術コミュニケーションの動向2013でのMOOC

  • 学術コミュニケーションのオープン化を背景に
    • 学術コミュニケーションの末端にある教育も当然オープン化
  • 現代の高等教育
    • 米国型学生消費者主義
    • 大学工場モデル
    • 授業料高騰
    • 大学生数の増加と卒業生の質の低下
  • そこにMOOC!
  • 大学を変容させる
    • 従来型講義形式/教室の消滅(今でもスライドを読み上げるだけの授業は多い?)
    • Blended learning. Flipped Classroomは残る
    • キャンパスの消滅
    • カリキュラム不要
    • 学位という「包括保証」無意味化
  • 大学のグローバル化
    • 人の移動
    • 情報の移動
    • 学術は本来グローバル
    • たまたま英語が優勢言語だがそれ以外の言語でもやれるようになる?
  • 高等教育機能のアンバンドリング
    • 人、場所、金、知識
  • 上記をまとめておく意味がなくなる?
    • 「知識の体系化・構造化はもう成り立たない!」
  • 放送大学
    • 8万人
    • JMOOCって?
  • 電子教材をどう考える?
    • 図書館はどうすれば良いのか?
    • このあたりを今日は考えていきたい

JMOOCについて(山田)

公開大学とMOOCsについて

  • 公開大学
    • 日本では放送大学(OUJ)
  • MOOCs
    • 大規模、公開、オンライン(遠隔)
    • 教材配信でなく授業、単位や学位も
  • ScalableなLMSだけでは不十分
    • 従来のものとは異なるものが必要になる
    • 他に何が必要?
  • MOOCsの発展段階(公開大学の立場から)
    • Stage1:新しいOERの1つ→従来のモデルよりは成功しているが…
    • Stage2:オープン教育の新たなモデル→公開大学にとって十分な脅威
    • Stage3:高等教育の新たなモデル→高等教育は「大学の独占ではなくなる」

JMOOC

  • つい先ごろ発足
    • 設立日は11/1となる予定
  • 社会の関心が高い
    • 大手紙でも取り上げられるほど
    • コントロールの利かないトレンド化している?
  • 基本理念
    • 日本人による日本とアジアのための「学びによる個人の価値を社会全体の共有価値へ拡大するMOOCs」の実現を山岳の連携によって強力に牽引
  • 批判に対して
    • 日本版MOOCsのような小さいことを言っているのか、という批判がある
    • 欧米で展開するMOOCsについて言語が障壁になっている人がかなりいる
    • 段階的なマーケティングは考えていて、今は「J=Japan」だが段階的には別の意味を見出すつもり
    • 個人的には「J=Joint」を掲げたい
    • 欧米型と異なるMOOCsの提案
  • 大学にとってのMOOCs
    • 反転学習の活用などによる効率のたかい教育への転換
    • 文科省風にいうと「単位の実質化} 
    • アジアを中心とした日本をより深く理解してもらえる留学生の増加
  • 企業にとってのMOOCs
    • 効果的・効率的な人材育成/任用/採用手段
    • アジアを中心とした優秀な人材の確保
  • JMOOCの活動
    • 正式発足後、各大学に参加をお願いしたい
    • 企業の特別会員はそこそこの数が集まっている
    • 放送大学で2014年4月から開講予定
  • 色んなタイプのMOOCsを考えていきたい

質疑

Q1:MOOCsが大学を終わらせてしまうかもしれない、という状況についてJMOOCはどう考えるか
A1:大学とは仲良くやっていきたいという話。JMOOCは時限つきの法人なのでその辺も気がかりではあるのだが…。本質的にはMOOCsがどうというよりは、知識基盤社会への変容の一側面がMOOCsなだけだと思っている。MOOCsが出てきたから大学がどうこうという話ではないと思う。非常に大きなトレンドに巻き込まれているという意識はあるが、これで大学をどうこうしようという立場ではない。

プロジェクトの紹介(堀)

MOOCsのとらえ方

  • 今、アメリカの大学関係者の間でで、MOOCsが大学の組織のありかたそのものを変えるのではないかと議論されている
    • 恐竜(大学)同士が相争っている間に隕石(MOOCs)で全滅するかもしれない!
  • MOOCsの課題
    • OER/OCW + テスト + 掲示板 = MOOCs?
    • スケーラビリティ
    • ユーザー認証
    • 完遂率
    • 既得権益者
  • もしかしたらすでにMOOCsは終わっているかもしれない?
  • その次(post-MOOCs)には何がくるのか?

新しい講義形式

  • ナノレクチャ:1分程度の講義動画
    • 電子書籍に埋め込む
  • LMSを介して世界中から講義を受けられる
  • 講義を受けた人間でラーニングコミュニティを形成する
  • 「MOOCsの次」を担うのは我々…だったら良いな

教科書や教材の電子化とMOOCs(三瓶)

はじめに

  • 土屋先生は「図書館はもう無くなる」と言っていた
    • 皆さんはそうは思っていないかもしれない
    • しかし今、企業はどんどん変わっている
    • 大学もそうなっていく可能性は十分にある
  • ネットワークに流れる情報量はおそらく5年で100倍になる
    • 今大丈夫でも、5年後には状況は大きく変わっている可能性が高い

ある2つのデータ

  • 37大学の図書館で貸し出された書籍
    • 上位2000タイトル中70%は医学・薬学
    • しかも体系的なものではなく試験勉強向きのもの
    • 20%は法律書
    • それ以外は10%程度
  • 学生は図書館で本を読んでいない!
  • 先生が読むべき本を指定していない!
  • なぜ先生は読むべき本を指定しないのか
    • 指定すれば図書館で読めるか?
    • 何時でも何処でも読めなければ
    • 電子化が必須
  • 中国語・日本語・韓国語、北米・東アジア図書館での所蔵数
    • 日本語の本は紙の本に比べて電子書籍が圧倒的に少ない
    • 韓国語の電子書籍のおよそ1/10
    • 紙の日本語の本は5万冊程度あるのに電子書籍は1244冊
  • 先生は、学生が読むべき本を指示する
    • 大学が、電子学術書を契約する
  • 学生が全員読んだことを前提に授業を行う
    • Active Learning
    • Flipped Learning
    • Flipped Class Room:反転授業
  • これまでそうは言ってもなかなか変わらなかった
    • MOOCsの普及は教科書や教材の電子化といった話題にとっても好機である

教材とMOOCsについて(井上)

九州大学附属図書館

  • 教科書・参考書の指定状況
    • 教科書・参考書ともに指定率が非常に低い
  • なぜ低いのか?
    • 授業に適した教科書がない?
    • 他人が作った教科書を使えるか?
    • 学生の負担を考慮?

教材について

  • なぜOERを再利用しないのか?
    • 授業に適した教材がない
    • 他人が作った教材を使えるか?
  • 授業の構成要素
    • 講義
    • 板書
    • スライド
    • 資料
    • 教科書
    • 参考書

MOOCs

  • MOOCsの利用
    • オンライン電子教科書としての利用
    • 現在の教科書は自著よりも他著が圧倒的に多い
    • MOOCsは講義ビデオ、宿題、試験、ディスカッション、受講生評価などをパッケージにしたもの
    • 教員が不要に?
  • 反転授業
    • 一般的な知識の取得は授業前に済ませておく
    • 授業中はディスカッションなど
    • 教員はモチベーションや進度を管理する立場に
  • 大学でのMOOCs
    • 今の大学教員は必ずしも専門だけを教えているわけではない
    • 大学に求められるのは自分たちの大学でしか出来ない授業
  • 開講授業
    • 大学独自の授業
    • 学部・学科・専攻で誇れる授業
    • 教員の自発的な開講による授業
  • なぜ授業を公開しないのか?
    • 授業に自信がない?
    • 受講生がいる以上、公開できるくらいのものをやらなければ
    • MOOCsは大学の授業そのものをよくする?
  • OCWの反省から
    • OCWが普及しなかったのはボランタリーベースだったから?
    • 収益モデルを考えなければMOOCも同じ轍を踏む可能性がある
  • MOOCsの受講携帯
    • 無償
    • 有償

まとめ

大学図書館とMOOCs(逸村)

  • 学修教育への関係
  • 教育コンテンツは重要
    • IRで公開されている良いコンテンツはアクセスが多い
    • 図書館が使わない手は無い
  • MOOCs(的なもの)は迫っている→大学そのものの在り方が問われている
    • 教員が、事務が、という段階ではない
  • ビジネスモデルをどうするのか→無償では難しい
  • 図書館はどうコミットするか
  • 図書館と大学との信頼関係を作らなければならない
    • 図書館が作ったコンテンツに関する信頼関係?

最後に(山地)

  • 場所よりもコンテンツ
  • 対岸の火事ではない
  • このチャンスを逃す手はない
  • 今あるインフラを使いながら教育コンテンツをリッチにする
    • そこに大学図書館がどうコミットしていくのか

   

(執筆:松野渉)



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