ERDBは何を変えるのか

ERDBは何を変えるのか-NIIと大学の連携によるERDBプロジェクトが狙うこと-

(以下敬称略)

日時:2013年10月30日 10:00-11:30
場所:第6会場
主催:国立情報学研究所
講師:
 米澤誠(東北大学附属図書館)
 飯野勝則(佛教大学図書館)
 木下克之(国立情報学研究所学術コンテンツ課)
司会・モデレーター:
 高橋菜奈子(国立情報学研究所学術コンテンツ課)

概要: フォーラム詳細

20131030 ERDB

フォーラムの構成

  • 今、なぜERDBが求められるのか-大学における学びの観点から-
  • ERDBとシステム連携・運用の具体的イメージを見てみよう
  • ERDBの開発状況
  • 質疑応答

その他の 記録

フォーラムの趣旨説明

  • ERDBプロトタイプ構築プロジェクトとは
    • 大学図書館とNIIの連携のもとに、電子リソースに関するデータ共有のための基盤構築を行うプロジェクト
  • 電子ジャーナルの管理・アクセス提供をめぐる課題
    • 刻々と変化する電子リソースの管理・提供は難しい
    • 紙媒体の資料を管理するNACSIS-CATの延長線上では電子リソースを管理できない
    • 問題の本質は利用者のアクセスに問題を生じているところ
    • ひいては利用者の信頼の損失につながる
    • それを解決するためのプロジェクトがERDBプロトタイプ構築プロジェクト
    • ナレッジベースのデータベース
  • このプロジェクトについて今日は報告を三本行う

米澤「今、なぜERDBが求められるのか-大学における学びの観点から-」

  • かなりマニアックなフォーラムなので皆さんどのような関心で来たのか興味がある
    • 主に図書館システム的な観点から?
    • 雑誌管理業務的な観点から?
    • 利用者サービス的な観点から?
  • 今日の観点は大学における学びの観点から
    • 皆さんがこれまであまり見てこなかった観点から再発見を目指す

電子リソース(ERDB)管理問題の背景

  • 大きくは二つ
    • 電子ジャーナルにおけるパッケージ契約の出現
    • オープンアクセスな情報源の出現
  • 従来型のNACSIS-CATの仕組みでは適切な対応が困難
  • 「次世代目録所在情報サービスの在り方について(最終報告)」
    • 構成単位に対応するメタデータの作成がより一層重要に
    • 情報の入手・利用がシームレスに行えることが当たり前になりつつある

ERDBとは(1)当初構想

  • 「電子情報資源管理システム(ERMS)実証実験. 平成20年度報告書」
    • 簡易なメタデータを蓄積した国内ナレッジベースの構築が重要課題

ERDBとは(2)今回の構想

  • 三層構造のデータベースでナレッジベース機能を集約したデータベースを作成
    • データの利活用が容易に

大学における「学びの転換」

  • 日本国内で研究大学と呼ばれる所は全体のほんのわずか
  • 多くの大学は学生の教育について重視している
  • ERDBを学生の教育という視点で見たときにどうなるか
  • 中教審答申(平成24年)によれば「能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換」が必要
    • 従来の定型的な知識を学ぶスタイルから、主体的に学ぶ力を得るスタイルへ
    • 知識そのものや内容そのものよりも、継続学習の能力や意欲の方が大切である(ドラッカー)
    • 活用方法を理解することこそ知識の本質(大向)

学びにおける情報源

  • 東北大学における基礎ゼミでのある学生のレポートの情報源例
    • 全てウェブ上の情報源
    • ウェブ上の情報源に流れる傾向がある
    • だからこそ信頼性のある情報を利用するよう促さなければならない
  • 日本語の雑誌論文は、大学の「学びの転換」において特に重要な情報源
  • 電子的な情報源を利用できる環境を整えるのがこれからの日本の大学図書館員のつとめ
  • 現状、日本のものについては殆ど出来上がっていない
    • これを作り上げなければならない
    • そうでなければ日本の学生の学びがどんどん立ち遅れていく
  • 特に日本国内のリソースを組織化するのが重要
    • そういった観点でこのERDBプロジェクトを皆さんには見ていって頂きたい

飯野「ERDBとシステム連携・運用の具体的イメージを見てみよう」

  • 具体的に業務として何をしなければいけないのか
    • 運用のイメージについて説明していく

ERDBのポイント

  • 自館の電子ジャーナルの購読状況などを他館と共有できる
  • 自館で購読できる電子ジャーナルのURLがわかる
  • 他館の電子ジャーナルの購読状況がわかる
  • ERDBとはリンクリゾルバとは違う
  • 電子リソースの管理システムとも違う
  • いわゆるILS等のシステムとAPIを用いて連携することが前提
  • データ版NACSIS-CAT

リンクリゾルバとの相違点

  • URLの形成はAPIを通して行う
  • 利用者むけインターフェースはない
  • OpenURLとは異なるクエリ
  • 登録内容は電子リソースが中心
  • リンクリゾルバと異なり、他館の購読状況が把握できる

図書館業務から見るERDB:データの作成・登録

  • 図書館で行うこと(電子ジャーナルの導入)
    • パッケージの導入
    • ILSを通してERDB上のパッケージを検索
    • 購入のフラグを立てる
    • 統一仕様の契約条件などを共通領域から自動で自館専用のローカル領域にコピー
    • コピーされた契約条件を自館のポリシーに合致するよう修正
    • 他館へ状況を公開
  • 図書館で行うこと(学内電子出版物の登録)
    • 学内電子出版物の状況把握
    • リストを作成
    • ERDBの専用サイトから一括登録
    • 適宜登録や修正を行っていく
    • 登録したデータは商用・非商用ナレッジベースに登録することで世界に流通

登録データの流通

  • 非商用KB←ERDB→商用KB
    • 日本の情報が世界に
    • 日本の学術情報の優位性の担保
    • 現在具体的な連携を模索中

図書館業務から見るERDBデータの利用

  • ILLとの連携
    • 電子送信が可能な電子リソースの所属先を検索するといったことも可能に
  • 図書館業務へのインパクト
    • ERM業務の標準化(NACSIS-CATが目録業務を標準化したように)
    • 寄贈の受け入れや保存の判断の迅速化
    • 電子リソースの効率的な運用
    • 電子的分担購読の可能性

利用者からみるERDB

  • CiNii Booksとの連携
  • ディスカバリーサービスとの連携
    • 一歩進むことによって他大学における契約状況を表示することも可能
    • 冊子と電子リソースの検索結果を一括してシームレスに表示する事が可能
    • 近隣の大学に絞った検索
    • 利用条件の参照
    • ILLの申込みへのダイレクトリンク
  • リンクリゾルバとの連携
    • 日本国内のオープンジャーナルなど電子出版物の存在が網羅的に収集される
    • リンクリゾルバの精度向上へ
    • CiNii BooksのAPIと連携することにより、自館で利用不可のリソースについて他館の状況を表示可

ERDBがもたらすこと

  • 学術情報入手の場の拡大
  • 相互利用の促進

運用上(特に)重要なこと

  • 国内の電子リソースの提供状況の包括的な把握とデータ作成および更新
  • 多くの図書館が無理なくナレッジベースへの登録が行える環境の構築支援(持続可能)
  • 図書館関連のシステムベンダーとの協調
  • JUSTICEとの密な連携

最後に

  • 図書館業務へ与えるインパクトは非常に大きい
  • 皆さんの協力を得てやっていきたい

木下「ERDBの開発状況」

  • 前の演者の話を振り返る
    • 教育の場でのERDBの運用
    • 自館でのERDBの運用例
    • 何故必要なのかなどは分かっていただけたと思う
  • 私からは現状の開発状況などをお話ししたい

はじめに

  • ERDBプロトタイプ構築プロジェクト
    • 平成24年度にスタート
  • 現在、17大学が4つのチームに分かれて参加している
    • イベントなどを通した広報
    • プロトタイプの検証
    • ナレッジベースのデータ収集・整備
    • 海外に関する情報収集

ERDBについて

  • ERDBはデータベースである
    • ナレッジベースが根幹
    • 契約とライセンスが関連付く
    • UIやWebAPIを通してデータの取得が可能
  • データ構造
    • 共通情報と各館情報の二つに分かれている
    • それぞれに日本語KB、海外KB、契約情報のデータが入っている
    • 各館情報は、共通情報を基に構築
    • アップロードすることによって共通情報と関連付けられる

開発について

  • 本格運用を目指して開発過程を7フェーズに分割
  • 各フェーズごとに進行状況を検討
    • 現在はフェーズ3
  • 今年度の開発ターゲット
    • プロトタイプ第2版の開発・公開開始
    • UI、API、データの検証などを実施中
    • 日本語KBの集積も行っている
    • 協働作成サブプロジェクトで図書館の手によるデータ構築を目指している
    • 現在1万件以上の登録データがある
  • プロトタイプ第2版について
    • UI、APIを用いてナレッジベース、パッケージ、プラットフォーム、契約情報をアップロード、ダウンロード可能
    • 再度の言及になるがアクセス方法としてはUIとAPIを用意
    • APIの使用やXMLの定義などをベンダーに対しても公開開始中
  • UIを通すとナレッジベースなどをCSV形式でDLできる
    • Excelで編集し、契約情報を付加することにより、時間情報として保存およびERDBへアップロードできる
  • APIを使用することにより、XMLでERDBに相互アクセス可能
    • また、契約情報の更新も可能
    • 図書システムからの利用において、機関システムとの連携が可能
    • 図書館にとって重要な機能と考えている

まとめ

  • ERDBプロトタイプ第2版を参加館へ公開
    • 図書館システムベンダーへ公開
  • 参加館による機能およびデータ検証
  • 本格開発に向けての機能およびデータ整備の重要なフィードバック

質疑応答

  • Q1:共有情報と自館情報という話があったが、エンドユーザーがデータベースを利用した時に、各館がカスタマイズした情報というのは、どう機関のシステムなどと連携していくのか
  • A1:現段階では図書館側のポリシーに沿って情報をカスタマイズ出来るようにしている。それを各館がどこまで編集できるようにするかについてはこれから詰めていくところ。なるべく図書館側に懸念を抱かせないような形にしていきたい
  • Q2:ナレッジベースの話だが、雑誌の改題や出版社の変更などをどう管理するかを想定していないと品質の維持・管理に問題が生じると思うのだがその辺の考えを聞かせてもらいたい
  • A2:共有情報の部分のデータをどう維持・管理していくかという話だと思う。定期的な管理についてはNIIが行っていく方針。現状ERDBに登録されているデータについてもかなり揺らぎがある。それをどう管理していくかというのは今回のフェーズで煮詰めていく部分で、非常に重要なご指摘であったと思う。一括ではNIIがやっていくがサブプロジェクトでもデータの管理は行っていく予定。オープンジャーナルのデータについては、大学ないしは機関などにデータを整備・修正しながらアップロードしてもらいたいと思っている。海外出版社のデータについてはJUSTICE事務局の協力を得て海外出版社とは調査・交渉中という段階。来年度には何らかのご報告をしたいと考えている。
  • Q3:ERDBについては図書館システムが対応していないと実際のデータ登録などが出来ないかと思う。そのあたりの見込みなどについて何か情報をお持ちだろうか。最悪図書館独自でデータのアップロードは可能か。
  • A3:現在アポイントがあったベンダー4社にAPIとXMLを提供している。システムベンダー側も現在試行錯誤している状況。システムによるが不可能ではない。
  • Q4:機関リポジトリに登録してあるデータはどうなるか。
  • A4:データの単位がERDBとIRでは異なる。(ジャーナルのタイトル単位と論文単位)IRのデータをERDB向けにどう丸めるかについて、課題意識はあるが具体的なアクションはまだこれから。

   

(執筆:松野渉)



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